夜勤中の怪事件
それからまた数日後、夜勤が回ってきた。
相棒はベテランのキモトさんである。
職場には3ケ所にセンサーが設置され、誰かがそこに行くと
音声で知らせてくれる。
遅出のスタッフも帰った後、「裏玄関です。」という声が
スピーカーから流れて来た。
「えっ、裏玄関は私が確かに施錠したけどな。」
キモトさんが首を傾げる。
1度目は軽く無視したが、2回目ともなるとそうもいかない。
2人で「やだ~、うそ~。」と言いながら、薄暗い裏玄関を
見に行く事にした。
先頭を行く私に「ワンだがんばれー、ワンだがんばれー。」と
声を掛けながら、恐る恐る後を付いて来るキモトさん。
やはり玄関にはきちんとカギが掛かっていた。
「きっと虫よ、虫が飛んでるんじゃない?」
「誤作動かもね。あ、そう言えばさっき蚊がいたから
そのせいよ、多分。」
な~んだ、蚊に反応してるだけなんだ。
その後も3回程音声が聞こえたので、思い余ってキモトさんが
殺虫剤をまき、その後はぴたりと止まった。
1匹の蚊ぐらいでわーわー言っていたのがちょっと恥ずかしい。
が、しかしである。
本当に蚊のせいだったのだろうか。
日中は網戸の無い正面玄関を開けっ放しにしていて、トンボや
蜂が頻繁に入ってくるわけだが、センサーはそれほど敏感には
反応しない。
蚊ぐらいのサイズをこんなに感知するのなら、日中は音声が
鳴りっ放しになりはしないか。。
私は職場のゴミ箱の整理が妙に好きなので、この日も明け方近くに
せっせと片付けていた。
と、女の人の甲高い声が聞こえる。
袋にゴミを詰め込む音が邪魔をして、誰が何を言っているのかは
全く分からない。
どうせまた夜昼構わず大きなため息をついたり、独り言を言う
入居者のミドリカワさんか、キモトさんがそのミドリカワさんに
話し掛けているんだろうと思い手を止めると、その声はぷっつりと
途絶えた。
あまり気にもせず、再びゴミをがさごそしていると、キモトさんが
やって来て、「ねえねえ、ワンださん今何か言った?」と聞いた。
「いや?ミドリカワさんかキモトさんじゃないと?」
「違う!私じゃないよ。
それにミドリカワさんでもないと思うけど。
こっちから(私がいる場所)聞こえたと思ったけどな~。」
キモトさんは私がいた方角から聞こえたと言い、私は絶対に
キモトさんがいた方角から聞こえたと言い張った。
私達じゃないとすると、やはりミドリカワさんに決まりだ。
と、少し前までは思っていたが、どうも引っかかる。
キモトさんがいた事務所の隣にミドリカワさんの居室がある。
キモトさんからすると、ミドリカワさんの方が私より近い所に
いた。
がさごそと音を立てていた私より、キモトさんの方がより
はっきりとその声を聞いているはずだ。
それに声質が全く違うのだから、キモトさんがミドリカワさんと
私の声を聞き間違う筈は無い。
私が聞いたのは独り言と言うよりもむしろ、誰かが誰かに
大きな声で話しかけている、もしくは何かを尋ねている様な
感じだった。
そしてこの日最大の事件はその直後に起きた。
職場にはお仏壇がある。
この土地に関わりのある、人間を卒業した人達のお供養の為
なのだが、夜勤者が毎朝お茶水をお供えする事になっていて、
この日はキモトさんが準備し、私が運ぶ役目を仰せつかった。
淹れたての暖かいとお茶と、お水。。。。
と思いきや、入っていたのは熱湯であった。
「え~~っ、うっそ~~、でもいつもお湯を入れてたよ~~。
水って水道水でいいと?知らんかった。
よかった、勉強になったよ。」
こうしてキモトさんとの夜勤は無事に終わったのである。
めでたしめでたし。
相棒はベテランのキモトさんである。
職場には3ケ所にセンサーが設置され、誰かがそこに行くと
音声で知らせてくれる。
遅出のスタッフも帰った後、「裏玄関です。」という声が
スピーカーから流れて来た。
「えっ、裏玄関は私が確かに施錠したけどな。」
キモトさんが首を傾げる。
1度目は軽く無視したが、2回目ともなるとそうもいかない。
2人で「やだ~、うそ~。」と言いながら、薄暗い裏玄関を
見に行く事にした。
先頭を行く私に「ワンだがんばれー、ワンだがんばれー。」と
声を掛けながら、恐る恐る後を付いて来るキモトさん。
やはり玄関にはきちんとカギが掛かっていた。
「きっと虫よ、虫が飛んでるんじゃない?」
「誤作動かもね。あ、そう言えばさっき蚊がいたから
そのせいよ、多分。」
な~んだ、蚊に反応してるだけなんだ。
その後も3回程音声が聞こえたので、思い余ってキモトさんが
殺虫剤をまき、その後はぴたりと止まった。
1匹の蚊ぐらいでわーわー言っていたのがちょっと恥ずかしい。
が、しかしである。
本当に蚊のせいだったのだろうか。
日中は網戸の無い正面玄関を開けっ放しにしていて、トンボや
蜂が頻繁に入ってくるわけだが、センサーはそれほど敏感には
反応しない。
蚊ぐらいのサイズをこんなに感知するのなら、日中は音声が
鳴りっ放しになりはしないか。。
私は職場のゴミ箱の整理が妙に好きなので、この日も明け方近くに
せっせと片付けていた。
と、女の人の甲高い声が聞こえる。
袋にゴミを詰め込む音が邪魔をして、誰が何を言っているのかは
全く分からない。
どうせまた夜昼構わず大きなため息をついたり、独り言を言う
入居者のミドリカワさんか、キモトさんがそのミドリカワさんに
話し掛けているんだろうと思い手を止めると、その声はぷっつりと
途絶えた。
あまり気にもせず、再びゴミをがさごそしていると、キモトさんが
やって来て、「ねえねえ、ワンださん今何か言った?」と聞いた。
「いや?ミドリカワさんかキモトさんじゃないと?」
「違う!私じゃないよ。
それにミドリカワさんでもないと思うけど。
こっちから(私がいる場所)聞こえたと思ったけどな~。」
キモトさんは私がいた方角から聞こえたと言い、私は絶対に
キモトさんがいた方角から聞こえたと言い張った。
私達じゃないとすると、やはりミドリカワさんに決まりだ。
と、少し前までは思っていたが、どうも引っかかる。
キモトさんがいた事務所の隣にミドリカワさんの居室がある。
キモトさんからすると、ミドリカワさんの方が私より近い所に
いた。
がさごそと音を立てていた私より、キモトさんの方がより
はっきりとその声を聞いているはずだ。
それに声質が全く違うのだから、キモトさんがミドリカワさんと
私の声を聞き間違う筈は無い。
私が聞いたのは独り言と言うよりもむしろ、誰かが誰かに
大きな声で話しかけている、もしくは何かを尋ねている様な
感じだった。
そしてこの日最大の事件はその直後に起きた。
職場にはお仏壇がある。
この土地に関わりのある、人間を卒業した人達のお供養の為
なのだが、夜勤者が毎朝お茶水をお供えする事になっていて、
この日はキモトさんが準備し、私が運ぶ役目を仰せつかった。
淹れたての暖かいとお茶と、お水。。。。
と思いきや、入っていたのは熱湯であった。
「え~~っ、うっそ~~、でもいつもお湯を入れてたよ~~。
水って水道水でいいと?知らんかった。
よかった、勉強になったよ。」
こうしてキモトさんとの夜勤は無事に終わったのである。
めでたしめでたし。
by wanda_land
| 2009-09-24 21:21
| ワンだ日記