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ワンだ~ランド

wandaland.exblog.jp

なにげない出来事を薄く薄くのばしていく金箔職人ワンだの世界

牛飼いのおじさんの前職は

肉牛の良し悪しは見た目だけでは判断できない。
血筋が大事な要素らしい。
セリもある種の賭けなのだ。

おじさんは毎日牛の世話をして、売られて行く牛の
姿をその目で見ているわけだが、彼は思いがけない事を
言った。

「牛肉は好きですよ~。」

ええっ、食べているのか。
意外だ。

調子に乗った私は好奇心を爆発させた。

「するとこう、牛にブラッシングかなんかしながら、
 『こいつ、美味そうやな~。ちょっと尻んとこ
 食ってみっか。』なんて思ったりするんですか?」

「いやいや~、そんな事は考えんよ~。あはは~。」

牛飼いのおじさんと話が弾んでいると、旅館の
料理長さんが口を挟んできた。
「この人こう見えても、昔はこれだったんですよ。」
そう言いながら握った拳を額に当てた。

最初はピンと来なかった。
「お前は最近コレになっているぞ。」と言いながら
拳を鼻に当てたら、それは「天狗」の意味だ。

昔は天狗だった?

首をかしげていると、料理長さんは右手の拳の上に
左手の拳を重ねた。
ますます分からない。
ただの天狗じゃなくて大天狗?

「桜田門ですよ。」

どうしてその仕草が警察を表すのか詳細は明らか
ではないが、元警官、今牛飼いのおじさんは
そのやり取りを笑いながら聞いている。

おじさんはクラブと居酒屋さんも経営しているらしい。
絶対に素人さんが入ってはならないと思う様な、
お客さんはコワモテばかりというイメージの店名
(《黒いトカゲ》とか《青いイモリ》の類)だったが、
こんな優しそうなおじさんの経営するお店だとは
意外だった。

料理長さんが勤めている旅館で、父の1周忌を
した事を思い出した。
ボリュームがあってとても美味しかったので、
出席して頂いた方達も喜んでおられた事を話し、
お礼を言った。

牛飼いのおじさんからは「ご招待するから
うちの店に来て下さいネ。」と言ってもらった。

この2人が食事の前にタバコを吸い始めた時は、
こめかみがぴくぴくしたものだが、こうやって
話を交わすと案外楽しいものだ。

多分私達が帰った後、おじさんは私の事を
お寿司屋さんに聞いたに違いない。
どこの何者かを。
牛飼いのおじさんも料理長さんも、私の生活圏内に
いるのだ。
世の中は狭い。

ミケさんがたまたま伊万里牛の話をした事から、
会話の輪が広がったわけだが、誰から話を
聞かれているか分からないものだなと思う。
ご用心ご用心。
by wanda_land | 2006-07-31 22:42 | ワンだ日記

by wanda_land